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半月板損傷 _

半月板は、膝の関節の中にあるC型をした板状の組織で、骨と骨の間に挟まってクッションとしての働きをしています。また靭帯や軟部組織、腱を安定させる役割を担っています。膝への大きな衝撃(特にスポーツ中)や、長年の負荷の蓄積、加齢による経年変化などによって、半月板が傷ついたり、割れたり、ひびが入ったりしている状態のことを「半月板損傷」といいます。損傷された部分に引っかり感を感じます。
スポーツ復帰までに、軽微な損傷や断裂のときは約3週間程度、手術が必要な場合は2~6ヶ月かかります。

症状

  • 膝を曲げたり、伸ばしたりすると、痛みが生じる
  • 膝の関節が完全に伸びない・曲がらない
  • 痛み、違和感、腫れ(主にひざの内側や外側が痛みます)
  • クリック音(パキパキ音がする)
  • 曲げ伸ばしの際に引っかかりを感じる
  • 膝を動かせなくなる(ロッキング)
  • 正座やあぐらが困難
  • ひざをまっすぐ伸ばせない
  • 歩いているときに「ガクン…」と膝が落ちる(ひざくずれ)
  • 膝に水が溜まって腫れたり、出血して血液が溜まる

原因

膝が強くねじれた際、膝に負荷がかかったときや、膝に強い衝撃が加わったことにより起こります。ストップやターンなどスポーツ中に傷めることが多く、ジャンプの着地の際などに前十字靱帯の断裂に伴って損傷することもあります。また、外傷と関係なく生じるものの中には円板状半月(生まれつき半月が大きく分厚いため関節の中で引っかかりやすい)の場合もあります。

治療

①保存療法

軽微な損傷や断裂のときは約3週間程度の保存療法で軽快することが多い。3週間以上症状が継続する場合、運動制限や疼痛が強い場合は手術を検討する。

  • 薬物療法…外用薬・内服薬・座薬で炎症を抑え、炎症が落ち着いたらヒアルロン酸注射を行い、ひざの潤滑を高めます。ひざの痛みを抑え、関節の動きを滑らかにすることで日常生活でかかる半月板への負荷を抑えられます。
  • 物理療法 …消機器によるひざの温熱や、電気的な刺激を利用してひざの痛みや炎症を抑える治療法で、温熱療法と寒冷療法があります。温熱療法ではひざを温めることで血行を良くし、運動以外で運動機能の活性化を図ります。一方寒冷療法は、アイシングなどでひざを冷やして痛みを和らげる方法です。
  • 装具療法 …日本人に多いO脚では、ひざの内側に体重が偏ってかかるため、ひざの内側の軟骨や半月板がすり減ってしまいます。装具療法では足や靴に装具を装着し、体重のかかる場所を変え、半月板のすり減りを防ぐことで、痛みの軽減が期待できます。
  • 運動療法 …痛みが酷くないようであれば、半月板をサポートする機能を強化しながら治療していく運動療法が効果的です。ただし、がむしゃらにリハビリを行ったからと言って治療効果が高いわけでもありません。医師や理学療法士など、専門家の指示を仰ぎながら行うことが大切です。
  • 再生医療 …自己組織を材料に病気や事故で失った組織・臓器の機能回復が期待出来る、先進的な治療法です。
    体に負担が少なく、外科的な手術に比べて治癒までの期間が短く済むなどのメリットの他、痛みの根本的治療にもなり得る方法であると考えています。保険適応外ではありますが、「手術しないで痛みを軽減したい」というニーズから、治療の選択肢として検討される方は年々増加しています。

②手術療法

断裂部位の幅が1センチ以上と大きい場合や自然治癒が期待できない場合は、手術療法が検討されます。
手術法には、損傷した部分を切り取る切除術と、損傷した部分を縫い合わせる縫合術の2種類があります。通常は関節鏡を使った鏡視下手術を行います。
スポーツ復帰までの期間は、切除術で術後2~3ヶ月、縫合術では術後4~6ヶ月のリハビリが必要です。

半月板損傷から早期復帰
するために

術後では、方向転換・ジャンプ・着地・カッティング・減速動作などの動作の獲得が最も難しいと言われています。これらは損傷した膝の不安定性や筋力の回復の程度が動作に影響します。膝関節の不安定性が低下したままだと横方向への動作が特に困難になります。筋力に関しては、健側の80~90%程度の回復がスポーツ復帰に望ましいと言われています。問題なくプレーする為には、筋力の回復がとても重要になります。

筋力のアンバランス

大腿四頭筋とハムストリングスの筋力のバランスは、ケガを予防する上で大切です。一般に、大腿四頭筋のほうがハムストリングスに比べて強いですきく、ハムストリングスの筋力が大腿四頭筋の65から70%は必要といわれています。その割合が低くなると半月板損傷のリスクが増えます。

体幹の筋力

体幹の筋肉とは、骨盤に起点、終点を持っている筋肉のことを言います。おなかの筋肉というと、割れる筋肉を思い浮かべると思いますが、スポーツ医学の観点から言うと、大事なのは、割れていることではなく、その下に隠れている、腹横筋という筋肉です。この筋肉は、Core をがっちりと固定してくれます。腹斜筋とともに、この筋肉がしっかりしていないと、手足が効率よく使えません。また、前十字靭帯損傷を含む下半身の怪我とこの筋肉の筋力低下の関連性も研究で明らかにされています。

体幹の必要性

ジャンプの着地やカッティング動作は体幹(上半身)と下肢が連動した動きを行うため、それらが協調した動きが求められます。しかし、筋力が不十分であったり、うまく体が使えていないと、膝が捻じれた姿勢(いわゆるknee-in toe-out)になり、損傷のリスクが高くなってしまいます。具体的に言うと、上半身が右側へ傾いた時、下肢はバランスをとろうとして反対の方向へ動きます。つまり、右膝は内側へ動き、損傷しやすい姿勢を強いられてしまいます。したがって、動作時の体幹のふらつきが靭帯損傷のリスクを高めることにつながります。

①膝周りのケア

ひざ周りが硬くなると動きが悪くなるため、マッサージをすることで動きをスムーズにさせます。

ひざ周りのマッサージ

②ストレッチ

膝周囲の筋肉が硬いと膝関節の動きが制限され、運動時にかかる膝への負荷が大きくなって、半月板損傷や外傷を起こしやすくなります。また、股関節―膝関節―足関節は連動しているので、股関節や足関節に硬さがあっても、膝への負荷は大きくなります。ここでは、膝関節、股関節、足関節のストレッチをご紹介していきます。
※膝を曲げる必要があるストレッチは、必ず膝の可動域制限の範囲内で行ってください

太ももの前側と膝を伸ばすストレッチ

  1. 壁に片手をついて立ち、片足の膝を曲げ、つま先をつかみます
  2. つま先をお尻の方へ引き寄せ、太ももの前側を伸ばします
  3. 息を吐きながら30秒キープします
  4. 反対側も同様に行い、左右2〜3セット行います
太ももストレッチ1 太ももストレッチ2

すねの前側とふくらはぎのストレッチ

  1. 床に座って両足を伸ばします
  2. つま先をゆっくりと遠くに伸ばして、すねを伸ばします
  3. つま先をゆっくりと手前に引き寄せ、ふくらはぎを伸ばします
  4. 2〜3を10回繰り返します
太ももストレッチ1 太ももストレッチ2

膝のストレッチ

  1. 乗せた足の重みだけで膝を伸ばす
  2. つま先を上に向け、呼吸を止めずに20秒キープ
  3. 反対側も同様に行い、左右2セット行います
太ももストレッチ2

股関節のストレッチ

  1. かかとをなるべく足に近づける
  2. 息きを止めずに肘で脚を押し広げ、胸を足首に近づけ、20秒キープ
  3. 2セット行います
股関節のストレッチ1

太ももとお尻のストレッチ

  1. 仰向けに寝て、片方の膝を抱え、ゆっくり胸に引き寄せ、20秒キープ
  2. 反対側も同様に行い、左右2セット行います
太ももとお尻のストレッチ

足関節のストレッチ

  1. 座った状態で、手で片方の足首を右回り、左回りにそれぞれ20回ずつまわす
  2. 反対側も同様に行い、左右2セット行います
足関節のストレッチ

③トレーニング

ここからが本番です。膝だけでなく、関連する様々な筋肉を鍛えることで再発防止・復帰後のパフォーマンスアップのために頑張りましょう!
※①②を行うこで③の効果がアップするので

①→②→③の順番で行ってください

初期 2-4週 (術後8日目から)

術後4週までは、痛みや炎症の管理、立ち上がり・歩行の再獲得、膝関節の可動域向上、大腿四頭筋の筋力向上を目標にリハビリを行います。
痛みや炎症のに対しては、医師にご相談ください。 立ち上がり・歩行の再獲得に対しては、手術の影響で体重をかけることに恐怖や痛みを感じて左右均等に体重をかけることができなかったり、必要以上に力んでしまったりするため忘れてしまった感覚を取り戻しましょう。

  1. 0:55 足部スライド・膝抱え運動
  2. 1:54 膝伸展運動
  3. 2:36 アクティブSLR
  4. 3:15 セラバンドエクササイズ(大殿筋&ハムストリングス)
  5. 4:00 セラバンドエクササイズ(中殿筋)
  6. 4:49 カーフレイズ (ひらめ筋)
  7. 5:24 カーフレイズ (腓腹筋)
  8. 5:54 前後ステップ
  9. 6:48 ハーフスクワット
  10. 7:55 Knee Bend Walking
  11. 8:36 片脚立位バランス練習
  12. 8:59 片脚立位(不良肢位)
  13. 9:23 リハビリ後RICE処置①
  14. 10:18 リハビリ後RICE処置②

中期 5-6週

膝関節の屈曲伸展の正常な動きの獲得、痛みなく歩行ができる、日常生活動作において正常な神経-筋コントロールを再獲得することが目的となります。また、手術した側の大腿四頭筋の筋力が手術していない側と比較して60%まで改善するように、段階的に筋力増強練習をしていきます。
膝関節の屈曲伸展の正常な動きの獲得に対しては、継続してお皿周りの柔軟性に努めることと、手術箇所の負担を見ながらハムストリングスや大腿四頭筋のストレッチを行います

  1. 1:11 片脚立位バランス(不安定型)
  2. 1:49 固有感覚・神経-筋肉トレーニング
  3. 2:47 スプリットスクワット
  4. 3:19 セラバンドスクワット
  5. 4:07 体幹トレーニング(初級)
  6. 4:39 体幹トレーニング(中級)
  7. 5:13 Side Knee Band Walking
  8. 5:59 フォワードランジ
  9. 6:29 サイドランジ
  10. 7:03 ブリッジ(膝屈曲位)
  11. 7:54 ブリッジ(膝伸展位)
  12. 8:56 レッグカール(9週以降)
  13. 9:23 リハビリ後RICE処置①
  14. 10:18 リハビリ後RICE処置②

中期での体幹トレーニングを始める場合、回数・セット数を増やす場合は、医師やリハビリ担当者と相談して行うようにしましょう。

後期 7-9週

後期では、エクササイズの量と質を増やして筋力向上に努めます。可動域測定と筋力測定を行い、支障のない可動域と筋力を獲得したらランニングを開始して行きます。動作の難易度は両脚から片脚へと移行していきます。合わせて、これまで獲得した膝の動きを維持するためにもストレッチングを継続して行っていきます。

  1. 0:31 ブルガリアンスクワット
  2. 1:44 ツイスティング
  3. 2:13 ツイステインング&クロスオーバー
  4. 2:54 ダウンスクワット
  5. 3:30 片脚ランディング
  6. 4:13 もも上げ動作(脚の入れ替え学習)
  7. 4:55 ジャンプアップ&ダウン
  8. 5:34 ランニング&ストップ
  9. 6:02 リハビリ後RICE処置①
  10. 6:57 リハビリ後RICE処置②

復帰準備期 10週-

手術した膝関節の動きに制限がなくなり、受傷する前と同様に筋力の回復に努める時期です。この時期より、スポーツ復帰に向けて競技特性に沿った動作の練習を開始します。具体的には、サッカーやバスケットボールであれば、ジャンプアップやリアクション(コンタクト)練習、カッティングや方向転換、パスやドリブルなどを行います。バレーボールなどであれば、スパイクやブロックなどの競技に合わせた練習を進めていきます。

  1. 0:52 片脚ポップオン
  2. 1:29 片脚ジャンプアップ&ダウン
  3. 2:08 ジャンプダウン&カッティング
  4. 2:43 ピボット&後方方向転換
  5. 3:20 ジグザグ走行
  6. 3:47 片脚方向転換ランディング
  7. 4:31 ラダートレーニング①
  8. 4:45 ラダートレーニング②
  9. 5:07 ラダートレーニング③
  10. 5:28 ラダートレーニング④
  11. 5:50 ラダートレーニング⑤
  12. 6:08 ラダートレーニング⑥
  13. 6:29 両脚方向転換ランディング
  14. 6:59 ジャンプアップ&リアクション(右)
  15. 7:16 ジャンプアップ&リアクション(前)
  16. 7:37 ジャンプアップ&リアクション(左)
  17. 7:55 片脚ホッピング(前方)
  18. 8:25 片脚ホッピング(左右)

④メンタル

スポーツの世界で優れたパフォーマンスを発揮するためには、メンタル(心)を鍛えることが当たり前になっており、リハビリ時期でも同じことがいえます。リハビリをより効果的に・迅速に復帰する・ケガをする前以上のパフォーマンスのために頑張っていきましょう!