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ルーズショルダー (動揺肩・肩関節不安定症)

肩の関節を構成する筋肉、靭帯、などの固定力が失われ関節自体が緩んでしまっている状態をいいます。緩んでいる側の腕を引っ張ると肩関節部にくぼみができる事もあります。肩関節は球と凹の形状をしており、この構造が特徴的で、多くの可動域を持ちます。しかし、この関節が過剰に可動する場合、肩関節の脱臼や亜脱臼を引き起こすことがあります。
症状として、肩の不安定感・肩を回すと音がする、違和感がある・肩が動きにくい・肩の倦怠感・痛みなどがあります。バレーでは、アタックやサーブなど肩を酷使する動作で痛みや不安感が生じ、悪化、放置すると肩が抜けそうな感覚が強まる、肩の可動域が狭まったり痛みの慢性化、常に倦怠感がある状態になる恐れがあります。
野球、テニス、バレーボール、バドミントンなど肩をよく使う、大きく動かすスポーツでしばしば見られます。
スポーツ復帰までに、軽度であれば2〜3ヶ月程度、中等度で3〜6ヶ月程度、重度で6ヶ月以上かかります。また、保存療法で症状が改善しない場合は手術が検討されます。

肩の怪我

症状

  • 肩周囲が痛む、特に運動後や疲労が溜まったときに痛む
  • 肩を動かすときに肩が抜けそうな感覚がある
  • 肩が動きにくく(可動域の制限)、腕を上げたり回したりする動作が困難
  • 肩を動かすのが不安と感じる
  • 肩を回すとカクカクしたり音がする
  • 肩に違和感を感じる
  • 肩のだるさや重さ、倦怠感
  • 重たい物を持てない

原因

  • 肩の酷使(オーバーユース)、特に空中で高い打点からボールを打つ動作
  • 肩関節を安定させるインナーマッスルの筋力低下
  • 元々、肩関節の可動域が広い関節が不安定な体質
  • 猫背や巻き肩などの悪い姿勢
  • 過去に、肩の脱臼や打撲といった外傷がある

治療

肩の治療

①保存療法

  • 薬物療法…湿布や痛み止め・消炎鎮痛剤の内服や、ステロイド注射などで痛みや腫れを抑え、回復を促します
  • 装具療法…患部を固定し、自然治癒を促す治療法です。三角巾やサポーター、テーピングなどで固定し、安静を保つことで、回復を促します
  • 物理療法 …機器による温熱や、電気的な刺激を利用して痛みや炎症を抑える治療法で、温熱療法と寒冷療法があります。温熱療法では患部を温めることで血行を良くし、回復の活性化を図ります。寒冷療法は、アイシングなどで患部を冷やして痛みを和らげる方法です
  • 運動療法 …痛みが酷くないようであれば、患部をサポートする機能を強化しながら治療していく運動療法が効果的です。医師や理学療法士など、専門家の指示を仰ぎながら行うことが大切です
  • 運動器カテーテル治療…カテーテルを痛みの原因である血管がある場所の近くで抗生物質でできた薬剤を注入し、もやもや血管を死滅させます
  • 体外衝撃波治療…衝撃波を患部に照射することで慢性的な痛みの軽減、組織の再生を促します
  • 超音波療法…衝超音波の振動を利用した施術で、血行の改善や炎症の軽減、疼痛の緩和、組織の伸展性向上、治癒力向上などの効果が期待できます
  • PRP療法…採取した血液を抽出加工して作るRPP(多血小板血漿)を、患部に注射する治療です。PRPに含まれる成長因子が、傷ついた組織の修復を促進します
  • 再生医療 …自己組織を材料とし、失った組織・臓器の機能回復が期待出来る先進的な治療法です。体に負担が少なく、手術に比べて治癒までの期間が短く済むことや、痛みの根本的治療にもなり得ると考えられています

②手術療法

保存療法で改善しない・日常生活あるいは運動中に脱臼を繰り返す場合などに、手術が検討されることがあります。
手術後には、修復を優先するため、一定期間の固定と数ヶ月にわたるリハビリテーションが必要になります。

整形外科で治療を受ける

まずは、すぐに整形外科で診断を受けましょう。
軽度の痛み以上の症状がある場合は、レントゲンやMRIなど精密検査を行い、医師の診断を受けることが重要です。正しい治療・リハビリを受けずにいると受傷した箇所は正しく治癒せず、可動域の低下・関節の不安定さが残り、結果としてより悪化を繰り返してしまいます。

接骨院、整骨院で治療を受ける

接骨院、整骨院で治療を受けることで早期回復を促すことができます。症状の解消だけではなく、体全体のバランスを見て原因を追及するため、体全体の不調を取り除くことができます。
また、関連する筋肉の柔軟性を高める為にそれらの筋肉をほぐす手技や、電療機器を使った施術を行います。

RICE処置

ライス処置

安静(Rest)
損傷部を中心に動かないように包帯などで固定します。安静は局所のみならず全身的なものも含み、体内の循環が活発にならないようにします。

冷却(Ice)
患部を冷やすことで血管が収縮し血流を減少させ内出血を抑えます。さらに、患部周囲の組織の代謝を低下させることにより炎症を抑えることができます。1回のアイシングの時間としては15分〜20分が目安です。ただし、凍傷には十分注意してください。

圧迫(Compression)
患部を包帯やサポーターまたはテーピングなどで圧迫することにより内出血による腫れを抑えます。

挙上(Elevation)
患部を心臓よりも高い位置に上げることにより血液の環流を助けたり、局所の内出血を抑えます。

アイシング

アイシング

急性期(怪我や損傷の直後から3日間)に患部を冷却することで炎症による痛みや腫れ、熱感を軽減し、症状悪化を防ぐ方法です。特に急性の症状である熱を持った痛みに対して効果的です。
アイシングは、氷嚢やを使って患部を冷やし、前述の炎症による痛みや腫れ、熱感の軽減を目指すと同時に、これらの症状悪化を防ぐことを目的としています。

  1. 氷水を入れる袋1つを用意します
  2. 氷水を袋に入れて氷嚢を作ります
  3. 患部に氷嚢をのせて20分間冷やします
  4. 20分後、タオルと氷嚢を患部から離し、体温が自然に元に戻るのを待ちます。
  5. 2時間おきに1〜4を行います。
    ここまでを1セットとし、1日に2~3セットを3日間行ってください。

ルーズショルダー(動揺肩・肩関節不安定症)から早期復帰するために

1. 大至急アイシング・RICE処置を行う

痛めてからどれくらいの時間が経過したか、アイシングしていた時間、RICE処置していたかによって治る期間も変わってきます。
肩に痛みを感じたら、大至急アイシング、RICE処置を行ってください。そうすることで、炎症、腫れや内出血を最小限に抑え、筋肉の修復を促し、結果的に全治までの期間も短縮できます。
ただし、アイシング・RICE処置は、怪我の直後から4日目以降も続けると、かえって逆効果になる可能性があります。一般的に怪我の直後から3日間と言われていますが、アイシングの期間は医師に相談しましょう。

RICE処置、アイシング

2. すぐに病院へ行き、適切な治療を受ける

すぐに治療を受けないと重症化する可能性が高いです。重症化することで治療期間が何ヶ月も長引いてしまいます。
また、適切な治療を受けることも重要です。適切な治療が受けられていなければいつまで経っても良くなりません。ある病院では、痛みが引くまで経過観察というが一向に良くならず。別の病院では、骨にも異常が見つかり固定をしないと治らないということが判明。このようなケースは実際にあるので、一向に良くならない場合は別の病院に診断してもらいましょう。特に肩の専門医、または得意とする病院やスポーツ整形外科へ行くことを強くお勧めします。

3. 日上生活でできる怪我の回復を早める方法

以下3点が、日上生活でできる怪我の回復を早める方法です。動画で詳しく解説されているのでぜひ見てください

  1. 睡眠を7時間以上とる
  2. 湯船に毎日浸かる。ただし急性期(怪我の直後から3日間)は浸かってはいけない。炎症が悪化します
  3. 水を1日に2~3ℓ飲む

4. 早期リハビリテーション

痛みが引いたら、すぐに肩の可動域訓練や、軽い筋力トレーニングを開始することが大切です。痛みが無理なく耐えられる範囲であれば継続をおすすめします。
痛めた後、肩の筋肉はすぐ使えなくなるため、筋力低下が起こります。また、関節が固まり、可動域が制限されてしまいます。筋力と可動域の低下を最小限に抑え、回復・筋力強化させることがスポーツへの早期復帰の鍵となるため、早い段階から積極的にリハビリや筋力トレーニングを行いましょう。
ただし、痛みが出ない範囲で行ってください。

5. 肩のインナーマッスル(ローテーターカフ)の強化

ルーズショルダーの根本的な改善には、肩関節を安定させるインナーマッスルの強化が不可欠です。
インナーマッスルが強化されることで、肩関節の揺れや不安定性が抑えられ、痛みや再脱臼のリスクを減らせます。
肩関節のインナーマッスルは、棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋の4つがあります。これらの筋肉をまんべんなく強化することで早期回復・スポーツのパフォーマンス向上がします。

6. 肩の可動域を拡大、肩甲胸郭関節の動きの向上

ルーズショルダーは肩関節を支える靱帯や関節包が緩み、不安定性が高まった状態です。この不安定さを補うためには肩の可動域を拡大・肩甲胸郭関節の動きの向上が必要です。
肩の可動域を拡大するのは、肩関節の安定性を回復させ、痛みを軽減し、日常生活やスポーツのパフォーマンスを向上させるために必要です。
肩甲胸郭関節の動きの向上は、肩甲骨の安定性と動きを高めることで、肩関節に過剰な負担をかけずに正しい動きを取り戻すことができます。

7. 肩甲骨の可動域と筋力の向上

肩甲骨は肩関節の動く土台です。ここが安定することでルーズショルダーは改善へ向かいます。肩甲骨が不安定だとインナーマッスル(ローテーターカフ)がどれだけ頑張っても肩がグラついてしまいます。
具体的に、肩関節(上腕骨頭)は、肩甲骨の関節窩という小さな皿の上で動きます。肩甲骨がしっかり固定されないと、「皿」がグラグラして上腕骨が安定せず脱臼リスクが高まるのです。
肩甲骨と同時に、肩甲骨に直接つながる、前鋸筋僧帽筋下部菱形筋の強化が早期復帰のカギとなります。

8. 体幹の強化

体幹を鍛えることで姿勢が安定し、肩甲骨の位置が改善・肩甲骨周りの筋肉がほぐれ、肩への負担が軽減されます。ルーズショルダーの根本原因である肩関節の不安定さに対して、体幹を安定させることで肩関節の機能が補われ、痛みの軽減や関節の安定化に繋がります。
また、体幹を強化することでスポーツのパフォーマンスが向上します。

9. 先進医療を受ける

「治療」の①保存療法で紹介した、下記の治療法は、ほとんどが保険適用外のため高額ですが、早期回復のために高い効果があります。先進医療を受けることで、 1週間〜数ヶ月ほど復帰時期が短縮されたという報告もあります。ぜひ検討してみてください。

  • 運動器カテーテル治療
  • 体外衝撃波治療
  • PRP療法
  • 超音波療法
  • 再生医療

ルーズショルダー(動揺肩・肩関節不安定症)からの早期復帰
プログラム5選

①ストレッチ・エクササイズ

肩が痛いと肩周辺のストレッチのみ必要だと思いがちですが、肩に連なる肩甲骨や肩甲骨関節、胸、三角筋、背中などのストレッチをすることで、肩への負担をより軽減することができます。
また、疲労もとれやすくなるため、競技のパフォーマンスも向上します。
お風呂上がりにすると、固まった筋肉が柔らかくなりより効果的です。
ただし、急性期(傷めた直後から3日間)は行わないでください。
また、痛みが出ない範囲で行ってください。

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②筋力トレーニング

筋肉を鍛えることで体への負担を減らす上に、血流を良くすることで患部の状態が良くなりやすく、競技へのパフォーマンスも向上します。
また、筋肉が弱いと靭帯の張力が不足し、怪我をしやすくなることがあるため、筋肉を鍛えることは重要です。
ただし、急性期(傷めた直後から3日間)は行わないでください。
また、痛みが出ない範囲で行ってください。

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一緒にできる体幹トレーニング

体幹トレーニング

ここからは体幹を中心とした筋力トレーニングです。体幹とは、頭と手足を除いた胴体(背、腹まわり)のことです。高いパフォーマンスを発揮するためには全身の力を連動させ、ロスなく全身に伝えることです。ただし、体幹が強いけど、動きが出ない選手はパフォーマンスに繋がりません。そのため、「柔軟性」「強さ」が両立している体幹を作ることが必要です。体幹トレーニングは体幹の動き作り(ストレッチなど)とセットが鉄則です。この両立した体幹を向上させることで、下記の効果があります。

  1. 全身の動きが安定し、瞬発力や反応速度が上がる
  2. 体のブレがなくなり、どんな姿勢でも安定してボールに対応できる
  3. ジャンプ力が向上し、ブロックやスパイクに有利になる
  4. アタックやスパイク、サーブなどダイレクトに力をボールに乗せることができ、威力が向上
  5. 空中バランスが安定するため、スパイクやレシーブの精度が上がる
  6. レシーブやトスなどの安定性と精度が上がる
  7. ブロックなどぶつかったときにバランスが崩れにくくなる
  8. 無理な動きが無くなり、怪我のリスクが減る
  9. 呼吸をするための筋肉を鍛えることで、姿勢の改善・呼吸がしやすくなり、持久力が上がる
  10. バランス力がが上がる
  11. トレーニングの効率を高める

体幹を中心とした、様々な筋肉を鍛えることで復帰後のパフォーマンスアップのために頑張りましょう!
※患部に痛みが出る場合はすぐに止めてください

3分体幹ストレッチ

体幹多軸ストレッチ

効果大!自宅で体幹トレーニング3選

概要欄に詳しい解説動画があります

【背筋】スパイク ブロック技術向上のための広背筋 体幹筋トレ【元ビーチバレー日本代表】

【超簡単!体幹トレーニング】家でテレビを見ながらできる!

家トレ6分【中級レベル】腹筋・体幹トレーニング

③バレーボールトレーニング

ここからは怪我をしていてもできるバレーボールトレーニングです。ここで覚えていただきたい言葉が「患部外トレーニング」です。
患部外トレーニングとは、怪我している部位以外のトレーニングを行うことです。怪我をしている間でも動かせる部位で練習を行うことで、復帰をスムーズにすることができます。また、怪我をしているときにこそ強化できる部分があったり、新たなステップアップや、今まで気づかなかった新たな発見があるものです。
復帰後のパフォーマンスアップのために頑張りましょう!

※無理はしないでください

※患部に痛みが出る場合はすぐに止めてください

ジャンプ力アップ!下半身の力を上半身に上手く伝えられるトレーニング【日本代表】

④心肺機能(体力)トレーニング

怪我をして1ヶ月休養すると、以前の心肺機能(体力)を取り戻すのに1~2ヶ月かかると言われています。早期復帰を目指す人にとってこの期間は痛手です。心肺機能が低下すると、体内の酸素量が低下しパフォーマンスの低下、心拍出力の低下によりすぐ疲れやすくなります。そのため足を怪我していてもできる心肺機能トレーニングをすることで、早期復帰を目指し、怪我前よりもレベルアップした体を手に入れましょう!
※痛みが出る場合はすぐに止めてください

エアロバイク

エアロバイク

エアロバイクは怪我によって走れない方でも、安全に太ももやお尻の筋肉、心肺機能(体力)を鍛えられます。自宅にエアロバイクがあるという方はなかなかいないはずなので、ジムなどで利用する時には毎回足の位置やサドルの位置を確認しておきましょう。正しい位置を知りたい時には管理人さんなどに聞くのが一番。間違った位置で行ってしまうと、足への負担が大きくなってしまいます。以下が具体的なメニューです。

  1. 400mインターバル走を想定
    60秒 × 10セット リカバリー45秒
  2. 1000mインターバル走を想定
    180秒 × 5セット リカバリー60秒
  3. ペダルの重さについては、脈拍が170程度まで上がる重さに設定してください

水泳

水泳

水泳は全身運動のため、全身の筋肉、心肺機能を鍛えることができます。また、水圧の力でマッサージ効果もあり、疲労の回復にも役立ちます。足が痛い場合は、足にビート板を挟んで手だけで前に進むようにすれば、効果があります。アスリートもプールトレーニングを活用しているので、非常に有効です。以下が具体的なメニューです。

  1. クロールで25m
    10本〜30本ペース リカバリー30秒
  2. クロールで50m
    5本〜15本ペース リカバリー60秒
  3. 目安は8〜9割の力で泳いでください。設定タイムを決めてもいいでしょう。

⑤メンタル

スポーツの世界で優れたパフォーマンスを発揮するためには、メンタル(心)を鍛えることが当たり前になっており、リハビリ時期でも同じことがいえます。リハビリをより効果的に・迅速に復帰する・ケガをする前以上のパフォーマンスのために頑張っていきましょう!

瞑想

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