症状
ボールを打つ動作を繰り返した結果、肩への負担が蓄積し、肩周辺の筋肉を緊張させます。
筋肉は緊張すると硬化し、血行不良を起こします。この状態が続くと炎症が誘発され、腱板損傷を発症させてしまい、下記のような症状がみられます。
- ボールを打ってすぐは痛いが、打ち続けると和らぐ
- 肩を真横から上げようとすると途中で引っかかるような痛みが生じる
- 肩を伸ばして横方向に上げると力が抜けたり、肩が痛くて眠れない
- 痛みで腕が上がらない、腕を下ろすときの痛み
- 肩を動かすとゴリゴリと音がする
- 肩の不安定感、脱力感、疲労感
原因
- ボールを打つ動作の繰り返し、転倒などで肩を強くぶつける
- 肩の酷使
- 正しくないフォームで打ち続けたり、肩や肩甲骨周りの筋肉不足
- 過剰な肩の回旋運動
- ウェイトトレーニングなどで肩に過剰な負荷
治療
①保存療法
数週間から数カ月の競技の中止によって痛みが軽減されることが多くなります。競技を中止している間も、フォームチェック・改善を行い、再発防止に努めます。
- 薬物療法…湿布や痛み止めの内服、ヒアルロン酸やステロイドなどの注射で、肩の潤滑を高めます。痛みを抑え、関節の動きを滑らかにすることで日常生活でかかる肩への負荷を抑えられます。
- 物理療法 …機器による肩の温熱や、電気的な刺激を利用して肩の痛みや炎症を抑える治療法で、温熱療法と寒冷療法があります。温熱療法では患部を温めることで血行を良くし、運動以外で運動機能の活性化を図ります。一方寒冷療法は、アイシングなどで患部を冷やして痛みを和らげる方法です。
- 運動療法 …痛みが酷くないようであれば、肩をサポートする機能を強化しながら治療していく運動療法が効果的です。ただし、がむしゃらにリハビリを行ったからと言って治療効果が高いわけでもありません。医師や理学療法士など、専門家の指示を仰ぎながら行うことが大切です。
- 運動器カテーテル治療…カテーテルを痛みの原因である血管がある場所の近くで抗生物質でできた薬剤を注入し、もやもや血管を死滅させます
- 体外衝撃波治療…衝撃波を患部に照射することで慢性的な痛みの軽減、組織の再生を促します
- 超音波療法…衝超音波の振動を利用した施術で、血行の改善や炎症の軽減、疼痛の緩和、組織の伸展性向上、治癒力向上などの効果が期待できます
- PRP療法…採取した血液を抽出加工して作るRPP(多血小板血漿)を、患部に注射する治療です。PRPに含まれる成長因子が、傷ついた組織の修復を促進します
- 再生医療 …自己組織を材料とし、失った組織・臓器の機能回復が期待出来る先進的な治療法です。体に負担が少なく、手術に比べて治癒までの期間が短く済むことや、痛みの根本的治療にもなり得ると考えられています
②手術療法
保存療法で十分な効果が得られない場合には、手術を検討することがあります。
関節鏡視下での「デブリードマン」、肩峰の骨切除を行う「除圧術」などがあります。
整形外科で治療を受ける
まずは、すぐに整形外科で診断を受けましょう。
軽度の痛み以上の症状がある場合は、レントゲンやMRIなど精密検査を行い、医師の診断を受けることが重要です。正しい治療・リハビリを受けずにいると受傷した箇所は正しく治癒せず、可動域の低下・関節の不安定さが残り、結果としてより悪化を繰り返してしまいます。
接骨院、整骨院で治療を受ける
接骨院、整骨院で治療を受けることで早期回復を促すことができます。症状の解消だけではなく、体全体のバランスを見て原因を追及するため、体全体の不調を取り除くことができます。
また、関連する筋肉の柔軟性を高める為にそれらの筋肉をほぐす手技や、電療機器を使った施術を行います。
RICE処置
安静(Rest)
損傷部を中心に動かないように包帯などで固定します。安静は局所のみならず全身的なものも含み、体内の循環が活発にならないようにします。
冷却(Ice)
患部を冷やすことで血管が収縮し血流を減少させ内出血を抑えます。さらに、患部周囲の組織の代謝を低下させることにより炎症を抑えることができます。1回のアイシングの時間としては15分〜20分が目安です。ただし、凍傷には十分注意してください。
圧迫(Compression)
患部を包帯やサポーターまたはテーピングなどで圧迫することにより内出血による腫れを抑えます。
挙上(Elevation)
患部を心臓よりも高い位置に上げることにより血液の環流を助けたり、局所の内出血を抑えます。
アイシング
急性期(怪我や損傷の直後から3日間)に患部を冷却することで炎症による痛みや腫れ、熱感を軽減し、症状悪化を防ぐ方法です。特に急性の症状である熱を持った痛みに対して効果的です。
アイシングは、氷嚢やを使って患部を冷やし、前述の炎症による痛みや腫れ、熱感の軽減を目指すと同時に、これらの症状悪化を防ぐことを目的としています。
- 氷水を入れる袋1つを用意します
- 氷水を袋に入れて氷嚢を作ります
- 患部に氷嚢をのせて20分間冷やします
- 20分後、タオルと氷嚢を患部から離し、体温が自然に元に戻るのを待ちます。
- 2時間おきに1〜4を行います。
ここまでを1セットとし、1日に2~3セットを3日間行ってください。
腱板損傷・断裂から早期復帰するために
1. 大至急アイシング・RICE処置を行う
痛めてからどれくらいの時間が経過したか、アイシングしていた時間、RICE処置していたかによって治る期間も変わってきます。
手首の親指側に痛みを感じたら、大至急アイシング、RICE処置を行ってください。そうすることで、炎症、腫れや内出血を最小限に抑え、筋肉の修復を促し、結果的に全治までの期間も短縮できます。
ただし、アイシング・RICE処置は、怪我の直後から4日目以降も続けると、かえって逆効果になる可能性があります。一般的に怪我の直後から3日間と言われていますが、アイシングの期間は医師に相談しましょう。
RICE処置、アイシング
2. すぐに病院へ行き、適切な治療を受ける
すぐに治療を受けないと重症化する可能性が高いです。重症化することで治療期間が何ヶ月も長引いてしまいます。
また、適切な治療を受けることも重要です。適切な治療が受けられていなければいつまで経っても良くなりません。ある病院では、痛みが引くまで経過観察という提案が一向に良くならず。別の病院では、骨にも異常が見つかり固定をしないと治らないということが判明。このようなケースは実際にあるので、一向に良くならない場合は別の病院に診断してもらいましょう。特に肩の専門医、または得意とする病院やスポーツ整形外科へ行くことを強くお勧めします。
3. 日上生活でできる怪我の回復を早める方法
以下3点が、日上生活でできる怪我の回復を早める方法です。動画で詳しく解説されているのでぜひ見てください
- 睡眠を7時間以上とる
- 湯船に毎日浸かる。ただし急性期(怪我の直後から3日間)は浸かってはいけない。炎症が悪化します
- 水を1日に2~3ℓ飲む
4. 可動域、柔軟性の向上
腱板断裂では痛みによって筋肉が緊張したり、動かすのを避けたりする影響で肩の可動域制限を引き起こし柔軟性が低下します。そのため強い牽引力(引っ張られるストレス)がかかり、炎症を起こしやすく、痛みが長引く場合があります。肩を中心に関連する箇所のマッサージ、ストレッチをとりいれ、緊張状態を和らげ、柔軟性アップを目指しましょう。
5. 肩のインナーマッスル強化
「動かす筋肉」であるアウターマッスルに対して、インナーマッスルは「支える筋肉」をいいます。腱板は、棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋の4つから構成され、どれもインナーマッスルです。これらを鍛えることで上腕骨を肩甲骨の関節窩に引き付けることでき、肩関節を「安定」させ、さらに動きをスムーズにしてくれます。そのため再発防止、痛み・炎症を抑えることができ回復を早めることができます。
6. 先進医療を受ける
「治療」の①保存療法で紹介した、下記の治療法は、ほとんどが保険適用外のため高額ですが、早期回復のために高い効果があります。先進医療を受けることで、 1〜3ヶ月ほど復帰時期が短縮されたという報告もあります。ぜひ検討してみてください。
- 運動器カテーテル治療
- 体外衝撃波治療
- PRP療法
- 超音波療法
- 再生医療
③筋力トレーニング
一般的に結合組織が柔らかい人は、肩の靭帯の張力が不足し、怪我をしやすくなることがあります。つまり、筋肉を鍛えることが重要なのです。
その中でも今回はインナーマッスルを鍛えることで、肩関節を「安定」させ、動きをスムーズにしてくれ、再発防止・痛み・炎症を抑えることができ回復を早めることができます。
筋肉を鍛えることで体への負担を減らす上に、競技へのパフォーマンスも向上します。
※人それぞれ腱板の状態により、「この筋トレはやっていい」という時期と「この筋トレはやってはいけない」という時期があります。一つ一つの筋トレを医師やリハビリ担当者と必ず相談して行いましょう。
4種類の腱板トレーニングで肩を安定化! 5:26 から始まります
次に上記「4種類の腱板トレーニングで肩を安定化!」を医師がより詳しく解説しています。
トレーニングの理解を深めることで、より効果が得られます。
肩インナーマッスルの鍛え方3種 8:45 ~ 13:34
肩インナーマッスルの鍛え方の極意 13:34 ~
腱板損傷・断裂は野球肩の1つです。下記リンクのインピンジメント症候群も野球肩の1つなので、下記のインピンジメント症候群のマッサージ、ストレッチ、筋トレも参考にしてください。
インピンジメント症候群のマッサージ、ストレッチ、筋トレ
体幹トレーニング
ここからは体幹を中心とした筋力トレーニングです。体幹とは、頭と手足を除いた胴体(背、腹まわり)のことです。高いパフォーマンスを発揮するためには全身の力を連動させ、ロスなく全身に伝えることです。ただし、体幹が強いけど、動きが出ない選手はパフォーマンスに繋がりません。そのため、「柔軟性」と「強さ」が両立している体幹を作ることが必要です。体幹トレーニングは体幹の動き作り(ストレッチなど)とセットが鉄則です。この両立した体幹を向上させることで、下記の効果があります。
- 全身の動きを安定化させ、フットワーク・ダッシュスピードが上がる
- 全身が安定しボールに力を伝えやすいため、ショット力・ボールコントロール・プレーの精度が上がる
- 体のブレがなくなりストロークが安定する
- サーブの安定感とパワーが増す
- 姿勢の改善により、呼吸がしやすくなり、持久力が上がる
- バランス力がが上がる
- 無理な動きが無くなり、怪我のリスクが減る
- トレーニングの効率を高める
体幹を中心とした、様々な筋肉を鍛えることで復帰後のパフォーマンスアップのために頑張りましょう!
※患部に痛みが出る場合はすぐに止めてください
3分体幹ストレッチ
体幹多軸ストレッチ
【10分間】日本代表選手もやっている! 体幹トレーニング!
高強度インターバルトレーニング
テニスに必要な筋肉の鍛え方!【背中トレーニング】
【8分間】テニスが安定!8分間体幹強化トレーニング!
【杉山愛のフォア】「体幹で打つ」
体幹を使った打ち方を紹介しています。参考にしてみてください。
⑤心肺機能(体力)トレーニング
怪我をして1ヶ月休養すると、以前の心肺機能(体力)を取り戻すのに1~2ヶ月かかると言われています。早期復帰を目指す人にとってこの期間は痛手です。心肺機能が低下すると、体内の酸素量が低下しパフォーマンスの低下、心拍出力の低下によりすぐ疲れやすくなります。そのため足を怪我していてもできる心肺機能トレーニングをすることで、早期復帰を目指し、怪我前よりもレベルアップした体を手に入れましょう!
※痛みが出る場合はすぐに止めてください
エアロバイク
エアロバイクは怪我によって走れない方でも、安全に太ももやお尻の筋肉、心肺機能(体力)を鍛えられます。自宅にエアロバイクがあるという方はなかなかいないはずなので、ジムなどで利用する時には毎回足の位置やサドルの位置を確認しておきましょう。正しい位置を知りたい時には管理人さんなどに聞くのが一番。間違った位置で行ってしまうと、足への負担が大きくなってしまいます。以下が具体的なメニューです。
- 400mインターバル走を想定
60秒 × 10セット リカバリー45秒
- 1000mインターバル走を想定
180秒 × 5セット リカバリー60秒
ペダルの重さについては、脈拍が170程度まで上がる重さに設定してください
水泳
水泳は全身運動のため、全身の筋肉、心肺機能を鍛えることができます。また、水圧の力でマッサージ効果もあり、疲労の回復にも役立ちます。足が痛い場合は、足にビート板を挟んで手だけで前に進むようにすれば、効果があります。アスリートもプールトレーニングを活用しているので、非常に有効です。以下が具体的なメニューです。
- クロールで25m
10本〜30本ペース リカバリー30秒
- クロールで50m
5本〜15本ペース リカバリー60秒
目安は8〜9割の力で泳いでください。設定タイムを決めてもいいでしょう。