menu

離断性骨軟骨炎 (外側型野球肘)

野球肘で最も重症になる障がいの1つです。関節の中の軟骨(なんこつ)が剥がれ落ちてしまう障害で、成長期の小中学生に多く発症します。初期には自覚症状がないことが多く、13-17歳ごろにグラグラになった軟骨がはがれて痛みが出て初めて受診されることもよくあります。
原因の1つとして、関節の柔軟性や筋力などが低下すると全身運動のつながりが崩れて肘関節にかかる負担が増えてしまいます。関節の柔軟性や筋力が低下することで悪いフォームになったり、投げ過ぎにより肘に多くのストレスがかかったりすることで肘に痛みが生じ、投球が困難になります。
スポーツ復帰までに、保存療法の場合は、3~6ヶ月程度が目安です。手術療法の場合は、6ヶ月~1年程度かかります。

肘の怪我

症状

  • 肘に痛みや違和感がある(特に投球時)
  • 投球時に肘が引っかかるような感覚がある
  • 肘の曲げ伸ばしがスムーズにできない
  • 肘外側を押した時の痛み
  • 肘の腫れ
  • 投球数が多い日に痛みが増す

原因

  • 肘への繰り返し負荷、オーバーユース
  • 成長期の骨の脆弱性
  • 不適切な投球フォーム
  • 全身の関節の柔軟性・可動域や筋力の低下
  • 過度な練習や、十分な休息を取らない

治療

肘の治療

①保存療法

  • アイシング&湿布
  • 薬物療法…湿布や痛み止め・消炎鎮痛剤の内服や、ヒアルロン酸注射で痛みや腫れを抑えます
  • 装具療法…患部を固定し、自然治癒を促す治療法です。テーピング・サポーター・包帯・ギブスなどで固定し、安静を保つことで、回復を促します
  • 物理療法 …機器による温熱や、電気的な刺激を利用して痛みや炎症を抑える治療法で、温熱療法と寒冷療法があります。温熱療法では患部を温めることで血行を良くし、回復の活性化を図ります。寒冷療法は、アイシングなどで患部を冷やして痛みを和らげる方法です
  • 運動療法 …痛みが酷くないようであれば、患部をサポートする機能を強化しながら治療していく運動療法が効果的です。医師や理学療法士など、専門家の指示を仰ぎながら行うことが大切です
  • 運動器カテーテル治療…カテーテルを痛みの原因である血管がある場所の近くで抗生物質でできた薬剤を注入し、もやもや血管を死滅させます
  • 体外衝撃波治療…衝撃波を患部に照射することで慢性的な痛みの軽減、組織の再生を促します
  • PRP療法…採取した血液を抽出加工して作るRPP(多血小板血漿)を、患部に注射する治療です。PRPに含まれる成長因子が、傷ついた組織の修復を促進します
  • 超音波療法…超音波の振動を利用した施術で、血行の改善や炎症の軽減、疼痛の緩和、組織の伸展性向上、治癒力向上などの効果が期待できます
  • 再生医療…自己組織を材料とし、失った組織・臓器の機能回復が期待出来る先進的な治療法です。体に負担が少なく、手術に比べて治癒までの期間が短く済むことや、痛みの根本的治療にもなり得ると考えられています

②手術療法

骨片が不安定、遊離している、保存療法で改善しない、骨軟骨が大きく剥がれている場合、手術を選択することがあります。手術を選択することで、安定した修復が期待でき、再発リスクが低く、長期的なスポーツ継続に有利です。また、患部の状態によっては手術を選択したほうが早く復帰できるケースもあるため、医師と相談して最適な判断をしましょう。

整形外科で治療を受ける

まずは、すぐに整形外科で診断を受けましょう。
軽度の痛み以上の症状がある場合は、レントゲンやMRIなど精密検査を行い、医師の診断を受けることが重要です。正しい治療・リハビリを受けずにいると受傷した箇所は正しく治癒せず、可動域の低下・関節の不安定さが残り、結果としてより悪化を繰り返してしまいます。

接骨院、整骨院で治療を受ける

接骨院、整骨院で治療を受けることで早期回復を促すことができます。症状の解消だけではなく、体全体のバランスを見て原因を追及するため、体全体の不調を取り除くことができます。
また、関連する筋肉の柔軟性を高める為にそれらの筋肉をほぐす手技や、電療機器を使った施術を行います。

RICE処置

ライス処置

安静(Rest)
損傷部を中心に動かないように包帯などで固定します。安静は局所のみならず全身的なものも含み、体内の循環が活発にならないようにします。

冷却(Ice)
患部を冷やすことで血管が収縮し血流を減少させ内出血を抑えます。さらに、患部周囲の組織の代謝を低下させることにより炎症を抑えることができます。1回のアイシングの時間としては15分〜20分が目安です。ただし、凍傷には十分注意してください。

圧迫(Compression)
患部を包帯やサポーターまたはテーピングなどで圧迫することにより内出血による腫れを抑えます。

挙上(Elevation)
患部を心臓よりも高い位置に上げることにより血液の環流を助けたり、局所の内出血を抑えます。

アイシング

アイシング

急性期(怪我や損傷の直後から3日間)に患部を冷却することで炎症による痛みや腫れ、熱感を軽減し、症状悪化を防ぐ方法です。特に急性の症状である熱を持った痛みに対して効果的です。
アイシングは、氷嚢やを使って患部を冷やし、前述の炎症による痛みや腫れ、熱感の軽減を目指すと同時に、これらの症状悪化を防ぐことを目的としています。

  1. 氷水を入れる袋1つを用意します
  2. 氷水を袋に入れて氷嚢を作ります
  3. 患部に氷嚢をのせて20分間冷やします
  4. 20分後、タオルと氷嚢を患部から離し、体温が自然に元に戻るのを待ちます。
  5. 2時間おきに1〜4を行います。
    ここまでを1セットとし、1日に2~3セットを3日間行ってください。

離断性骨軟骨炎から早期復帰するために

1. 大至急アイシング・RICE処置を行う

痛めてからどれくらいの時間が経過したか、アイシングしていた時間、RICE処置していたかによって治る期間も変わってきます。
肘を痛めたと思ったら、大至急アイシング、RICE処置を行ってください。そうすることで、炎症、腫れや内出血を最小限に抑え、筋肉の修復を促し、結果的に全治までの期間も短縮できます。
ただし、アイシング・RICE処置は、痛めた直後から4日目以降も続けると、かえって逆効果になる可能性があります。一般的に痛めた直後から3日間と言われていますが、アイシングの期間は医師に相談しましょう。

RICE処置、アイシング

2. すぐに病院へ行き、適切な治療を受ける

すぐに治療を受けないと重症化する可能性が高いです。重症化することで治療期間が何ヶ月も長引いてしまいます。
また、適切な治療を受けることも重要です。適切な治療が受けられていなければいつまで経っても良くなりません。ある病院では、痛みが引くまで経過観察という提案が一向に良くならず。別の病院では、骨にも異常があるということが判明。このようなケースは実際にあるので、一向に良くならない場合は別の病院に診断してもらいましょう。特に肘の専門医、または得意とする病院やスポーツ整形外科へ行くことを強くお勧めします。

3. 投球の中止、安静

投球を中止して肘を安静にすることが最も重要です。焦って投球をしてしまったり、肘に負担がかかる運動をしてしまうと重症化し、より治りが遅くなります。焦る気持ちを抑えケアに専念しましょう。
また、投球やバッティングだけではなく、カバンなどの重い物を持つ動作、拭き掃除なども禁止となります。”箸と鉛筆以外は持たない”くらいの安静が必要と言われています。休むことが早期回復への近道です。

4. 全身の柔軟性と筋力向上

関節の可動域を正常に戻し柔軟性と筋力を上げていくことで、症状の改善・再発防止になります。柔軟性と筋力の向上といっても肘だけではありません。体幹、股関節、肩周りなどの全身です。投球動作は、全身の動作です。全身がしなやかで、安定していると全身を使って良い球を投げることが出来ます。
また、柔軟性が低下しているせいで悪い投球フォームになっていることもあるので、マッサージやストレッチで全身の柔軟性を向上させましょう。

5. 先進医療を受ける

「治療」の①保存療法で紹介した、下記の治療法は、ほとんどが保険適用外のため高額ですが、早期回復のために高い効果があります。先進医療を受けることで、 1.5〜3か月ほど復帰時期が短縮されたという報告もあります。ぜひ検討してみてください。

  • 運動器カテーテル治療
  • 体外衝撃波治療
  • PRP療法
  • 超音波療法
  • 再生医療

6. 手術の選択

手術をすることで、保存療法よりも早く治る場合があります。重症度や患部の状態によっ変わるため、医師と相談して最適な判断をしましょう。
また、安定した修復が期待でき、再発リスクが低く、長期的なスポーツ継続に有利です。

離断性骨軟骨炎からの早期復帰
プログラム6選

①マッサージ

マッサージで筋肉の張り、緊張状態を和らげることで血液の流れを良くし、回復を早めることができます。患部の周辺だけでなく、関連する全身の筋肉を軽くもむ程度で痛みを抑えることができ、筋肉と関節の動きが良くなります。お風呂上がりに行うと、固まった筋肉が柔らかくなりより効果的です。痛む箇所は避けるようにしましょう。
ただし、マッサージの開始時期よりも前に行うと悪化の恐れがあります。
必ず医師に、一つ一つのメニューの開始時期の確認と、許可を得てから行ってください。

マッサージガンを使ったマッサージ 1:44 から始まります

野球肘のセルフマッサージ 0:50から始まります

肘が曲がらない、伸びにくい方!

肘の外側が痛む人必見! 1:56から始まります

フォームローラーを使ったマッサージ

②ストレッチ

肘が痛いと肘周辺のストレッチのみだと思いがちですが、肘に連なる体幹や首、股関節など全身のストレッチをすることで、肘への負担をより軽減することができます。また、ストレッチを行うことで可動域の確保、血流が改善し疲労が軽減されるため競技のパフォーマンスも向上します。お風呂上がりに行うと、固まった筋肉が柔らかくなりより効果的です。
ただし、ストレッチの開始時期よりも前に行うと悪化の恐れがあります。
必ず医師に、一つ一つのメニューの開始時期の確認と、許可を得てから行ってください。

肘離断性骨軟骨炎のスペシャルストレッチ 1:34 から始まります

肘が曲がらない方 1:30 から始まります

肘外側の痛みを解消する

元プロ野球トレーナーの肘ストレッチ 2:20から始まります
4:53からの②アライメントは、必ず医師に許可を得てから行ってください

肘が痛い方にオススメのストレッチ 1:28から始まります

【毎日5分ストレッチ】DAY1.野球に必要な柔軟性

上記はDAY1のストレッチです。DAY1~DAY5の動画があるので、毎日別の動画でストレッチを行なってください。

③筋力トレーニング

筋肉が弱いと靭帯の張力が不足し、怪我をしやすくなることがあるので、筋肉を鍛えることは重要です。筋肉を鍛えることで体への負担を減らす上に、血流を良くすることで患部の状態が良くなりやすく、競技へのパフォーマンスも向上します。
ただし、筋トレの開始時期(一般的には、受傷後2~6ヶ月)よりも前に行うと悪化の恐れがあります。
必ず医師に、一つ一つのメニューの開始時期の確認と、許可を得てから行ってください。

グリップエクササイズ手部

FCUトレーニング(尺側手根屈筋トレーニング)

スパイラルパンチ

肘を強くするトレーニング 2:05から始まります

野球肘を治して球速も上がる!?

プロ野球投手の肩・肘トレーニングメニュー

【肘強化】野球肘対策!トレーニング6選

体幹トレーニング

ここからは体幹を中心とした筋力トレーニングです。体幹とは、頭と手足を除いた胴体(背、腹まわり)のことです。高いパフォーマンスを発揮するためには全身の力を連動させ、ロスなくボールに伝えることです。ただし、体幹が強いけど、動きが出ない選手はパフォーマンスに繋がりません。そのため、「柔軟性」「強さ」が両立している体幹を作ることが必要です。体幹トレーニングは体幹の動き作り(ストレッチなど)とセットが鉄則です。この両立した体幹を向上させるにつれ、
ピッチャーであれば

  1. 球速が上がる
  2. コントロールが良くなる
  3. フォームが安定する

バッターであれば

  1. 軽く振っているように見えるのに飛距離が伸びる
  2. あらゆるコースに対応できる
  3. 安定してミートできる
  4. 振りに行ってバットを止める(スイングキャンセル)

などの効果があります。
また、例に挙げると、東北楽天ゴールデンイーグルス・岸孝之投手。
細身でものすごいボールを投げるタイプの典型例と言える投手ですが、その要因の一つが体幹。
決して固めるのではなく、非常にしなやかに使っています。決して筋骨隆々でなくとも、体幹の操作レベルによってそれを補い、プロでストレートが通用する好例です。

体幹を中心とした、様々な筋肉を鍛えることで復帰後のパフォーマンスアップのために頑張りましょう!
必ず医師に、一つ一つのメニューの開始時期の確認と、許可を得てから行ってください。

3分体幹ストレッチ

体幹多軸ストレッチ

6分体幹トレーニング

体幹・股関節・骨盤トレーニング

阪神選手の体幹トレーニング

ジャンプなど大きな動作もあるので、怪我の影響がない範囲で行ってください

④野球トレーニング

ここからは怪我をしていてもできる野球トレーニングです。ここで覚えていただきたい言葉が「患部外トレーニング」です。
患部外トレーニングとは、怪我している部位以外のトレーニングを行うことです。怪我をしている間でも動かせる部位でバッティング、ピッチング、守備などの練習を行うことで、復帰をスムーズにすることができます。また、怪我をしているときにこそ強化できる部分があったり、新たなステップアップや、今まで気づかなかった新たな発見があるものです。
復帰後のパフォーマンスアップのために頑張りましょう!

※無理はしないでください

※痛みが出る場合はすぐに止めてください

  • バッティング
  • ピッチング
  • 守備

⑤心肺機能(体力)トレーニング

怪我をして1ヶ月休養すると、以前の心肺機能(体力)を取り戻すのに1~2ヶ月かかると言われています。早期復帰を目指す人にとってこの期間は痛手です。心肺機能が低下すると、体内の酸素量が低下しパフォーマンスの低下、心拍出力の低下によりすぐ疲れやすくなります。そのため足を怪我していてもできる心肺機能トレーニングをすることで、早期復帰を目指し、怪我前よりもレベルアップした体を手に入れましょう!
※痛みが出る場合はすぐに止めてください

エアロバイク

エアロバイク

エアロバイクは怪我によって走れない方でも、安全に太ももやお尻の筋肉、心肺機能(体力)を鍛えられます。自宅にエアロバイクがあるという方はなかなかいないはずなので、ジムなどで利用する時には毎回足の位置やサドルの位置を確認しておきましょう。正しい位置を知りたい時には管理人さんなどに聞くのが一番。間違った位置で行ってしまうと、足への負担が大きくなってしまいます。以下が具体的なメニューです。

  1. 400mインターバル走を想定
    60秒 × 10セット リカバリー45秒
  2. 1000mインターバル走を想定
    180秒 × 5セット リカバリー60秒
  3. ペダルの重さについては、脈拍が170程度まで上がる重さに設定してください

水泳

水泳

水泳は全身運動のため、全身の筋肉、心肺機能を鍛えることができます。また、水圧の力でマッサージ効果もあり、疲労の回復にも役立ちます。足が痛い場合は、足にビート板を挟んで手だけで前に進むようにすれば、効果があります。アスリートもプールトレーニングを活用しているので、非常に有効です。以下が具体的なメニューです。

  1. クロールで25m
    10本〜30本ペース リカバリー30秒
  2. クロールで50m
    5本〜15本ペース リカバリー60秒
  3. 目安は8〜9割の力で泳いでください。設定タイムを決めてもいいでしょう。

⑥メンタル

スポーツの世界で優れたパフォーマンスを発揮するためには、メンタル(心)を鍛えることが当たり前になっており、リハビリ時期でも同じことがいえます。リハビリをより効果的に・迅速に復帰する・ケガをする前以上のパフォーマンスのために頑張っていきましょう!

瞑想

©2up Co.,Ltd.All Rights Reserved