TFCC損傷
TFCC損傷は、手首の小指側にある靭帯や軟骨などの組織が損傷している状態です。バッティング時に手首をひねっての捻挫、オーバーユース、転倒により手をつくなどにより、小指側に手を曲げて痛みが増すようであればこの怪我が疑われます。また、ドアノブを回すなど日常の動作でも痛みが生じることもあります。一度痛めると症状の改善が難しく、悪化すれば手術しなければならないこともあるため、早期から対処することが大切です。
スポーツ復帰までに、軽度であれば数週間~1,2ヶ月、中等度で2~3ヶ月、重度で6ヶ月ほどかかり、重度の場合手術を行うことがあります。
症状
特にタオルを絞ったり、ドアノブを回したりする動作や重い物を持つなどの際、また手首を小指側に倒す動きや手首を捻る際に痛みが生じます。また症状が強い場合は安静にしていても痛みを覚えることがあります。さらに動作の開始時に手の抜ける感覚を感じることもあります。また、手首の腫れ、可動域の制限などの症状があります。
- 肘を曲げ伸ばしすると痛む
- 肘の内側を押すと痛む
- 投球時、ボールを打つときのインパクト時に痛む
- 物を持つときに痛む
- 肘に不安定感がある、関節が緩い感じがする
- 肘の内側に腫れが起こる
- 可動域が低下する
原因
- オーバーユース(使いすぎ)
- スイングの繰り返しによる負荷
- 転倒により手をつく
- 衝突の際に手が巻き込まれる
治療
①保存療法
基本的には保存療法を選択し、固定装具やサポーターによる手首の安静によって症状は緩和します
- 薬物療法…湿布や痛み止めの内服、消炎鎮痛薬剤やステロイドなどの注射をし、症状を抑えます
- 運動器カテーテル治療…カテーテルを痛みの原因である血管がある場所の近くに抗生物質でできた薬剤を注入し、もやもや血管を死滅させます
- 動注治療…動注(動脈注射)治療とは、動脈に薬剤を直接注入する治療です。 テニス肘、ゴルフ肘、などの慢性炎症に伴って生じる異常な血管を塞栓し、炎症・痛みを和らげます
- 再生医療…自己組織を材料に病気や事故で失った組織・臓器の機能回復が期待出来る、先進的な治療法です。体に負担が少なく、外科的な手術に比べて治癒までの期間が短く済むなどのメリットの他、痛みの根本的治療にもなり得る方法です
- 体外衝撃波治療…衝撃波を患部に照射することで慢性的な痛みの軽減、組織の再生を促します
②手術療法
保存療法で十分な効果が得られない場合には、手術を検討することがあります。
- 保存療法で十分な効果が得られない場合には、手術を検討します。
- 内視鏡を用いたTFCCの縫合術や尺骨短縮術が行われます。
整形外科で治療を受ける
まずは、すぐに整形外科で診断を受けましょう。
軽度の痛み以上の症状がある場合は、レントゲンやMRIなど精密検査を行い、医師の診断を受けることが重要です。正しい治療・リハビリを受けずにいると受傷した箇所は正しく治癒せず、可動域の低下・関節の不安定さが残り、結果としてより悪化を繰り返してしまいます。
接骨院、整骨院で治療を受ける
接骨院、整骨院で治療を受けることで早期回復を促すことができます。症状の解消だけではなく、体全体のバランスを見て原因を追及するため、体全体の不調を取り除くことができます。
また、関連する筋肉の柔軟性を高める為にそれらの筋肉をほぐす手技や、電療機器を使った施術を行います。
RICE処置
安静(Rest)
損傷部を中心に動かないように包帯などで固定します。安静は局所のみならず全身的なものも含み、体内の循環が活発にならないようにします。
冷却(Ice)
患部を冷やすことで血管が収縮し血流を減少させ内出血を抑えます。さらに、患部周囲の組織の代謝を低下させることにより炎症を抑えることができます。1回のアイシングの時間としては15分〜20分が目安です。ただし、凍傷には十分注意してください。
圧迫(Compression)
患部を包帯やサポーターまたはテーピングなどで圧迫することにより内出血による腫れを抑えます。
挙上(Elevation)
患部を心臓よりも高い位置に上げることにより血液の環流を助けたり、局所の内出血を抑えます。
アイシング
急性期(怪我や損傷の直後から3日間)に患部を冷却することで炎症による痛みや腫れ、熱感を軽減し、症状悪化を防ぐ方法です。特に急性の症状である熱を持った痛みに対して効果的です。
アイシングは、氷嚢やを使って患部を冷やし、前述の炎症による痛みや腫れ、熱感の軽減を目指すと同時に、これらの症状悪化を防ぐことを目的としています。
- 氷水を入れる袋1つを用意します
- 氷水を袋に入れて氷嚢を作ります
- 患部に氷嚢をのせて20分間冷やします
- 20分後、タオルと氷嚢を患部から離し、体温が自然に元に戻るのを待ちます。
- 2時間おきに1〜4を行います。
ここまでを1セットとし、1日に2~3セットを3日間行ってください。
TFCC損傷から早期復帰するために
1. すぐに適切な治療を受けること
すぐに治療を受けないと重症化する可能性が高いです。重症化することで治療期間が何ヶ月も長引き、手術が必要になります。
また、適切な治療を受けることも重要です。適切な治療が受けられていなければいつまで経っても良くなりません。一向に良くならない場合は別の病院に診断してもらいましょう。特に手の専門医、または得意とする病院へ行くことを強くお勧めします。
2. アイシング
患部が赤くなっていたり、腫れていたり、痛みが出ている場合は、アイシングをする必要があります。アイシングは、運動後、お風呂に入ったあとなど一日に2、3回程度を10~15分ほど行うといいです。特に急性期(怪我や損傷の直後から3日間)に行うと効果的です。
3. 固定、安静
サポーターなどの固定器具でがっちり固定することが損傷した組織をより早く確実に治す方法です。
また運動を控えて十分手を休ませ、炎症や痛みを抑える必要があります。手を使う練習は一切禁止し焦る気持ちを抑えましょう。休むのも練習の内です。
4. 鍼と電気治療
鍼で痛みをコントロールし、周りの筋肉の緊張を改善し負担がかかりにくくします。そして電気治療で損傷した細胞への血液の出入りを多くし、自己修復力を高めることができます。
③筋力トレーニング
一般的に結合組織が柔らかい人は、手の靭帯の張力が不足し、怪我をしやすくなることがあります。つまり、筋肉を鍛えることが重要なのです。筋肉を鍛えることで手への負担を減らす上に、血流を良くすることで手の状態が良くなりやすく、競技へのパフォーマンスも向上します。
※人それぞれ手の状態により、「この筋トレはやっていい」という時期と「この筋トレはやってはいけない」という時期があります。一つ一つの筋トレを医師やリハビリ担当者と必ず相談して行いましょう。
体幹トレーニング
ここからは体幹を中心とした筋力トレーニングです。体幹とは、頭と手足を除いた胴体(背、腹まわり)のことです。高いパフォーマンスを発揮するためには全身の力を連動させ、ロスなくボールに伝えることです。ただし、体幹が強いけど、動きが出ない選手はパフォーマンスに繋がりません。そのため、「柔軟性」と「強さ」が両立している体幹を作ることが必要です。体幹トレーニングは体幹の動き作り(ストレッチなど)とセットが鉄則です。この両立した体幹を向上させるにつれ、
ピッチャーであれば
- 球速が上がる
- コントロールが良くなる
- フォームが安定する
バッターであれば
- 軽く振っているように見えるのに飛距離が伸びる
- あらゆるコースに対応できる
- 安定してミートできる
- 振りに行ってバットを止める(スイングキャンセル)
などの効果があります。
また、例に挙げると、東北楽天ゴールデンイーグルス・岸孝之投手。
細身でものすごいボールを投げるタイプの典型例と言える投手ですが、その要因の一つが体幹。
決して固めるのではなく、非常にしなやかに使っています。決して筋骨隆々でなくとも、体幹の操作レベルによってそれを補い、プロでストレートが通用する好例です。
体幹を中心とした、様々な筋肉を鍛えることで復帰後のパフォーマンスアップのために頑張りましう!
※患部に痛みが出る場合はすぐに止めてください
3分体幹ストレッチ
体幹多軸ストレッチ
6分体幹トレーニング
体幹・股関節・骨盤トレーニング
阪神選手の体幹トレーニング
ジャンプなど大きな動作もあるので、怪我の影響がない範囲で行ってください
⑤心肺機能(体力)トレーニング
怪我をして1ヶ月休養すると、以前の心肺機能(体力)を取り戻すのに1~2ヶ月かかると言われています。早期復帰を目指す人にとってこの期間は痛手です。心肺機能が低下すると、体内の酸素量が低下しパフォーマンスの低下、心拍出力の低下によりすぐ疲れやすくなります。そのため足を怪我していてもできる心肺機能トレーニングをすることで、早期復帰を目指し、怪我前よりもレベルアップした体を手に入れましょう!
※痛みが出る場合はすぐに止めてください
エアロバイク
エアロバイクは怪我によって走れない方でも、安全に太ももやお尻の筋肉、心肺機能(体力)を鍛えられます。自宅にエアロバイクがあるという方はなかなかいないはずなので、ジムなどで利用する時には毎回足の位置やサドルの位置を確認しておきましょう。正しい位置を知りたい時には管理人さんなどに聞くのが一番。間違った位置で行ってしまうと、足への負担が大きくなってしまいます。以下が具体的なメニューです。
- 400mインターバル走を想定
60秒 × 10セット リカバリー45秒
- 1000mインターバル走を想定
180秒 × 5セット リカバリー60秒
ペダルの重さについては、脈拍が170程度まで上がる重さに設定してください
水泳
水泳は全身運動のため、全身の筋肉、心肺機能を鍛えることができます。また、水圧の力でマッサージ効果もあり、疲労の回復にも役立ちます。足が痛い場合は、足にビート板を挟んで手だけで前に進むようにすれば、効果があります。アスリートもプールトレーニングを活用しているので、非常に有効です。以下が具体的なメニューです。
- クロールで25m
10本〜30本ペース リカバリー30秒
- クロールで50m
5本〜15本ペース リカバリー60秒
目安は8〜9割の力で泳いでください。設定タイムを決めてもいいでしょう。