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腱板損傷・断裂 (野球肩)

腱板損傷・断裂(インターナルインピンジメント)は野球肩の中の一つです。腱板とは、肩の中にある棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋という4つの筋肉の腱の総称です。
投球動作の繰り返しによる肩の酷使の他、ラケット競技、あるいは転倒した際に肩から落ちるなどの外傷が、その原因として挙げられます。
痛みで腕が挙がらない。夜、痛みで目が覚める。腕を下ろす時にも痛みが走る。痛くなったほうの肩を下にして寝られないなどの症状が現れます。
スポーツ復帰までに、軽度であれば1~3ヶ月、重度で6~8ヶ月かかり、重度の場合手術を行うことがあります。

肩の怪我

症状

投球動作を繰り返した結果、肩への負担が蓄積し、肩周辺の筋肉を緊張させます。
筋肉は緊張すると硬化し、血行不良を起こします。この状態が続くと炎症が誘発され、腱板損傷を発症させてしまい、下記のような症状がみられます。

  • 投球開始直後は痛いが、投げ続けると和らぐ
  • 肩を真横から上げようとすると途中で引っかかるような痛みが生じる
  • 肩を伸ばして横方向に上げると力が抜けたり、肩が痛くて眠れない
  • 痛みで腕が上がらない、腕を下ろすときの痛み
  • 肩を動かすとゴリゴリと音がする
  • 肩の不安定感、脱力感、疲労感

原因

  • 投球動作の繰り返し、転倒などで肩を強くぶつける
  • 投球動作の繰り返しによる肩の酷使
  • 正しくないフォームで投げ続けたり、肩や肩甲骨周りの筋肉不足
  • 過剰な肩の回旋運動
  • ウェイトトレーニングなどで肩に過剰な負荷

治療

肩の治療

①保存療法

数週間から数カ月の投球中止によって痛みが軽減されることが多くなります。投球を中止している間も、フォームチェック・改善を行い、再発防止に努めます。

  • 薬物療法…湿布や痛み止めの内服、ヒアルロン酸やステロイドなどの注射で、肩の潤滑を高めます。痛みを抑え、関節の動きを滑らかにすることで日常生活でかかる肩への負荷を抑えられます。
  • 物理療法 …機器による肩の温熱や、電気的な刺激を利用して肩の痛みや炎症を抑える治療法で、温熱療法と寒冷療法があります。温熱療法ではひざを温めることで血行を良くし、運動以外で運動機能の活性化を図ります。一方寒冷療法は、アイシングなどでひざを冷やして痛みを和らげる方法です。
  • 運動療法 …痛みが酷くないようであれば、肩をサポートする機能を強化しながら治療していく運動療法が効果的です。ただし、がむしゃらにリハビリを行ったからと言って治療効果が高いわけでもありません。医師や理学療法士など、専門家の指示を仰ぎながら行うことが大切です。

②手術療法

保存療法で十分な効果が得られない場合には、手術を検討することがあります。
関節鏡視下での「デブリードマン」、肩峰の骨切除を行う「除圧術」などがあります。

整形外科で治療を受ける

まずは、すぐに整形外科で診断を受けましょう。
軽度の痛み以上の症状がある場合は、レントゲンやMRIなど精密検査を行い、医師の診断を受けることが重要です。正しい治療・リハビリを受けずにいると受傷した箇所は正しく治癒せず、可動域の低下・関節の不安定さが残り、結果としてより悪化を繰り返してしまいます。

接骨院、整骨院で治療を受ける

接骨院、整骨院で治療を受けることで早期回復を促すことができます。症状の解消だけではなく、体全体のバランスを見て原因を追及するため、体全体の不調を取り除くことができます。
また、関連する筋肉の柔軟性を高める為にそれらの筋肉をほぐす手技や、電療機器を使った施術を行います。

RICE処置

ライス処置

安静(Rest)
損傷部を中心に動かないように包帯などで固定します。安静は局所のみならず全身的なものも含み、体内の循環が活発にならないようにします。

冷却(Ice)
患部を冷やすことで血管が収縮し血流を減少させ内出血を抑えます。さらに、患部周囲の組織の代謝を低下させることにより炎症を抑えることができます。1回のアイシングの時間としては15分〜20分が目安です。ただし、凍傷には十分注意してください。

圧迫(Compression)
患部を包帯やサポーターまたはテーピングなどで圧迫することにより内出血による腫れを抑えます。

挙上(Elevation)
患部を心臓よりも高い位置に上げることにより血液の環流を助けたり、局所の内出血を抑えます。

アイシング

アイシング

急性期(怪我や損傷の直後から3日間)に患部を冷却することで炎症による痛みや腫れ、熱感を軽減し、症状悪化を防ぐ方法です。特に急性の症状である熱を持った痛みに対して効果的です。
アイシングは、氷嚢やを使って患部を冷やし、前述の炎症による痛みや腫れ、熱感の軽減を目指すと同時に、これらの症状悪化を防ぐことを目的としています。

  1. 氷水を入れる袋1つを用意します
  2. 氷水を袋に入れて氷嚢を作ります
  3. 患部に氷嚢をのせて20分間冷やします
  4. 20分後、タオルと氷嚢を患部から離し、体温が自然に元に戻るのを待ちます。
  5. 2時間おきに1〜4を行います。
    ここまでを1セットとし、1日に2~3セットを3日間行ってください。

腱板損傷・断裂から早期復帰するために

1. アイシング、休養

患部が赤くなっていたり、腫れていたり、痛みが出ている場合は、アイシングをする必要があります。アイシングは、運動後、お風呂に入ったあとなど一日に2、3回程度を10~15分ほど行うといいです。
また運動を控えて十分肩を休ませ、炎症や痛みを抑える必要があります。投球は一切禁止し焦る気持ちを抑えましょう。休むのも練習の内です。

2. 可動域、柔軟性の向上

腱板断裂では痛みによって筋肉が緊張したり、動かすのを避けたりする影響で肩の可動域制限を引き起こし柔軟性が低下します。そのため強い牽引力(引っ張られるストレス)がかかり、炎症を起こしやすく、痛みが長引く場合があります。肩を中心に関連する箇所のマッサージ、ストレッチをとりいれ、緊張状態を和らげ、柔軟性アップを目指しましょう。

3. 肩のインナーマッスル強化

「動かす筋肉」であるアウターマッスルに対して、インナーマッスルは「支える筋肉」をいいます。腱板は、棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋の4つから構成され、どれもインナーマッスルです。これらを鍛えることで上腕骨を肩甲骨の関節窩に引き付けることでき、肩関節を「安定」させ、さらに動きをスムーズにしてくれます。そのため再発防止、痛み・炎症を抑えることができ回復を早めることができます。

腱板損傷・断裂からの早期復帰
プログラム6選

いよいよリハビリ・トレーニングに入りますが、肩の状態、手術をしたかしなかったかによって、やってはいけないものがあります。一つ一つのリハビリ・トレーニングを医師やリハビリ担当者と十分に相談して行いましょう。
また、痛みを感じない範囲で行うよう注意してください。

①マッサージ

マッサージで筋肉の張り、緊張状態を和らげることで血液の流れを良くし、回復を早めることができます。患部の周辺や関連するところを軽くもむ程度で痛みを抑えることができ、筋肉と関節の動きが良くなります。肩のサポーターなどで温めた後やお風呂上りにやると、固まった筋肉が柔らかくなりより効果的です。
※人それぞれ腱板の状態により、マッサージをやっていい時期とやってはいけない時期があります。医師やリハビリ担当者と必ず相談して行いましょう

肩のマッサージ 3:17 から始まります

②ストレッチ

ここでは、肩周りにかかる負担を軽減するためのストレッチを紹介します。肩だけでなく、首や体幹などの筋肉が硬くなると肩にかかるストレスが増えるため、入念にストレッチを行いましょう。また、ストレッチを行うことで可動域の確保、血流が改善し疲労が軽減されるため競技のパフォーマンスも向上します。肩のサポーターなどで温めた後やお風呂上りにやると、固まった筋肉が柔らかくなりより効果的です。
※人それぞれ腱板の状態により、「このストレッチはやっていい」という時期と「このストレッチはやってはいけない」という時期があります。一つ一つのストレッチを医師やリハビリ担当者と必ず相談して行いましょう

肩の基本ストレッチ3種 2:38 ~ 6:31

肩、胸郭、首のストレッチ3種 3:32 ~ 5:48

体幹の柔軟性のストレッチ3種

3:13 ~ 4:37 体幹柔軟性の重要性

4:37 ~ 6:53 体幹柔軟性のストレッチ

痛み度ごとのストレッチ

4:29 ~ 6:45 痛みがあるとき

6:47 ~ 10:04 痛みが軽減したとき

肩・胸のストレッチ

③筋力トレーニング

一般的に結合組織が柔らかい人は、肩の靭帯の張力が不足し、怪我をしやすくなることがあります。つまり、筋肉を鍛えることが重要なのです。
その中でも今回はインナーマッスルを鍛えることで、肩関節を「安定」させ、動きをスムーズにしてくれ、再発防止・痛み・炎症を抑えることができ回復を早めることができます。
筋肉を鍛えることで体への負担を減らす上に、競技へのパフォーマンスも向上します。
※人それぞれ腱板の状態により、「この筋トレはやっていい」という時期と「この筋トレはやってはいけない」という時期があります。一つ一つの筋トレを医師やリハビリ担当者と必ず相談して行いましょう。

肩のトレーニング

4種類の腱板トレーニングで肩を安定化! 5:26 から始まります

次に上記「4種類の腱板トレーニングで肩を安定化!」を医師がより詳しく解説しています。
トレーニングの理解を深めることで、より効果が得られます。

肩インナーマッスルの鍛え方3種 8:45 ~ 13:34

肩インナーマッスルの鍛え方の極意 13:34 ~

腱板損傷・断裂は野球肩の1つで、下記リンクのインピンジメント症候群も野球肩の1つなので、下記のインピンジメント症候群のマッサージ、ストレッチ、筋トレも参考にしてください。

インピンジメント症候群のマッサージ、ストレッチ、筋トレ

体幹トレーニング

ここからは体幹を中心とした筋力トレーニングです。体幹とは、頭と手足を除いた胴体(背、腹まわり)のことです。高いパフォーマンスを発揮するためには全身の力を連動させ、ロスなくボールに伝えることです。ただし、体幹が強いけど、動きが出ない選手はパフォーマンスに繋がりません。そのため、「柔軟性」「強さ」が両立している体幹を作ることが必要です。体幹トレーニングは体幹の動き作り(ストレッチなど)とセットが鉄則です。この両立した体幹を向上させるにつれ、
ピッチャーであれば

  1. 球速が上がる
  2. コントロールが良くなる
  3. フォームが安定する

バッターであれば

  1. 軽く振っているように見えるのに飛距離が伸びる
  2. あらゆるコースに対応できる
  3. 安定してミートできる
  4. 振りに行ってバットを止める(スイングキャンセル)

などの効果があります。
また、例に挙げると、東北楽天ゴールデンイーグルス・岸孝之投手。
細身でものすごいボールを投げるタイプの典型例と言える投手ですが、その要因の一つが体幹。
決して固めるのではなく、非常にしなやかに使っています。決して筋骨隆々でなくとも、体幹の操作レベルによってそれを補い、プロでストレートが通用する好例です。

体幹を中心とした、様々な筋肉を鍛えることで復帰後のパフォーマンスアップのために頑張りましう!
※患部に痛みが出る場合はすぐに止めてください

3分体幹ストレッチ

体幹多軸ストレッチ

6分体幹トレーニング

体幹・股関節・骨盤トレーニング

阪神選手の体幹トレーニング

ジャンプなど大きな動作もあるので、怪我の影響がない範囲で行ってください

④野球トレーニング

ここからは怪我をしていてもできる野球トレーニングです。ここで覚えていただきたい言葉が「患部外トレーニング」です。
患部外トレーニングとは、怪我している部位以外のトレーニングを行うことです。怪我をしている間でも動かせる部位でバッティング、ピッチング、守備などの練習を行うことで、復帰をスムーズにすることができます。また、怪我をしているときにこそ強化できる部分があったり、新たなステップアップや、今まで気づかなかった新たな発見があるものです。
復帰後のパフォーマンスアップのために頑張りましょう!

※無理はしないでください

※痛みが出る場合はすぐに止めてください

  • バッティング
  • ピッチング
  • 守備

⑤心肺機能(体力)トレーニング

怪我をして1ヶ月休養すると、以前の心肺機能(体力)を取り戻すのに1~2ヶ月かかると言われています。早期復帰を目指す人にとってこの期間は痛手です。心肺機能が低下すると、体内の酸素量が低下しパフォーマンスの低下、心拍出力の低下によりすぐ疲れやすくなります。そのため足を怪我していてもできる心肺機能トレーニングをすることで、早期復帰を目指し、怪我前よりもレベルアップした体を手に入れましょう!
※痛みが出る場合はすぐに止めてください

エアロバイク

エアロバイク

エアロバイクは怪我によって走れない方でも、安全に太ももやお尻の筋肉、心肺機能(体力)を鍛えられます。自宅にエアロバイクがあるという方はなかなかいないはずなので、ジムなどで利用する時には毎回足の位置やサドルの位置を確認しておきましょう。正しい位置を知りたい時には管理人さんなどに聞くのが一番。間違った位置で行ってしまうと、足への負担が大きくなってしまいます。以下が具体的なメニューです。

  1. 400mインターバル走を想定
    60秒 × 10セット リカバリー45秒
  2. 1000mインターバル走を想定
    180秒 × 5セット リカバリー60秒
  3. ペダルの重さについては、脈拍が170程度まで上がる重さに設定してください

水泳

水泳

水泳は全身運動のため、全身の筋肉、心肺機能を鍛えることができます。また、水圧の力でマッサージ効果もあり、疲労の回復にも役立ちます。足が痛い場合は、足にビート板を挟んで手だけで前に進むようにすれば、効果があります。アスリートもプールトレーニングを活用しているので、非常に有効です。以下が具体的なメニューです。

  1. クロールで25m
    10本〜30本ペース リカバリー30秒
  2. クロールで50m
    5本〜15本ペース リカバリー60秒
  3. 目安は8〜9割の力で泳いでください。設定タイムを決めてもいいでしょう。

⑥メンタル

スポーツの世界で優れたパフォーマンスを発揮するためには、メンタル(心)を鍛えることが当たり前になっており、リハビリ時期でも同じことがいえます。リハビリをより効果的に・迅速に復帰する・ケガをする前以上のパフォーマンスのために頑張っていきましょう!

瞑想

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